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盛岡地方裁判所 昭和59年(行ウ)2号 判決 1984年11月29日

岩手県下閉伊郡山田町川向町七番九号

原告

渡辺孝夫

右同所

原告

渡辺政信

右同所

原告

渡辺永治

右同所

原告

渡辺容子

同県宮古市保久田七番二二号

被告

宮古税務署長

渋谷典男

右指定代理人

林勘一

庄司勉

金子政雄

阿部士満夫

古館芳広

験馬国夫

熊谷与平

主文

一  本件各訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告らに対し昭和五七年一一月三〇日付をもってなした別表三の相続税の更正並びに過少申告加算税賦課決定についての異議決定中、別表一記載の課税価格及び納付すべき税額を越える部分並びに過少申告加算税賦課決定をいずれも取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

主文と同旨

2  本案の答弁

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告らは、昭和五四年八月六日に死亡した渡辺タツ(以下「被相続人」という。)から、相続により財産を取得した者であるが、それぞれ、自己にかかる相続税の課税価格及び納付すべき税額につき、被告に対し別表一記載のとおり、法定の申告期限内に申告した。

2  被告はこれに対し、昭和五七年七月一日付で、それぞれ別表二記載のとおり、更正及び過少申告加算税賦課決定をした。

3  原告らはこれに対し、昭和五七年八月三〇日に被告に対し異議申立てをし、被告は同年一一月三〇日付でそれぞれ別表三記載のとおり、右申立の一部を認容して各処分の一部を取り消し、その余の部分の申立を棄却する決定をした。

4  そこで、原告らは国税不服審判所長に対して、昭和五七年一二月二五日、右棄却にかかる部分の原処分につき審査請求をしたが、同所長は、昭和五八年一一月二九日、これを棄却する裁決をし、同月五日付で右裁決書謄本を送達し、原告らは同月七日、これを受け取った。

5  しかしながら、原告らが被相続人から相続により取得した財産は、別表四利用区分番号<1>ないし<4>に関する「請求人の主張」欄の合計であり、被告はこれを「原処分庁の主張」欄の合計であると主張しているが、被告には、右原告らと被告との主張の差額を過大に認定した違法がある。

よって、原告らは被告に対し、本件異議決定中異議申立を棄却した部分の取り消しを求める。

二  被告の本案前の主張

原告らは、昭和五九年三月五日に本件訴えを提起し、相続税の課税処分に対する異議申立てに被告がなした決定の取消しを求めているが、課税処分に対する異議申立てにつき税務署長がした決定の取消しを求める訴えの出訴期間は、右課税処分に対する審査請求につき裁決があった場合においても、異議申立てについての決定があったことを知った日又は決定の日から起算すべきである(最高裁昭和五一年五月六日第一小法廷判決・民集三〇巻四号五四一頁)ところ、本件異議申立てに対する決定は昭和五七年一一月三〇日付けでなされ、右決定は同日原告らに発送されてその後数日内に原告らに送達されたのであるから、本件訴えは行政事件訴訟法一四条一項、三項の出訴期間を徒過してなされたことが明らかである。

したがって、本件訴えは不適法であり、速やかに却下されるべきである。

三  被告の本案前の主張に対する原告渡辺孝夫の答弁

争う。

四  請求の原因に対する認否

1  1ないし4はいずれも認める。ただし4項の事実中裁決書謄本の日付は昭和五八年一二月五日、原告らがこれを受け取ったのは同月七日が正しい。

2  5は争う。

理由

原告らの本訴請求は、被告の原告らに対する相続税の更正及び過少申告加算税賦課決定に対する原告の異議申立に対し、被告がなした異議決定中右申立の一部を棄却した部分の取り消しを求めるものである。したがって、その出訴期間は、本件異議申立に対する決定のあったことを知った日又は右決定の日から、これを起算すべきものである(行政事件訴訟法一四条一項、三項、最高裁昭和五一年五月六日第一小法廷判決・民集三〇巻四号五四一頁)ところ、本件異議申立に対する決定が昭和五七年一一月三〇日になされたことにつき当事者間に争いはなく、弁論の全趣旨によると、右決定が同日原告らに発送されてその後数日内に原告らに送達されたことが認められ、他方、本訴の提起が昭和五九年三月五日であることは記録上明らかであるから、本件各訴えは出訴期間を徒過したのちに提起された不適法なものというべきであり、却下を免れない。

よって、本件各訴えを却下し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮村素之 裁判官 佐久間邦夫 裁判官 富永良朗)

別表一

相続税の申告

<省略>

別表二

相続税の申告に対する更正及び過少申告加算税賦課決定

<省略>

別表三

本件異議決定

<省略>

別表四

<省略>

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